HOME > ADHOUSE式 > コラム > ADハウス通信 2014年秋号「大規模災害から暮らしを守る-人事ではない土砂災害-」


コラム

2014.10.01更新

ADハウス通信 2014年秋号「大規模災害から暮らしを守る-人事ではない土砂災害-」

大規模災害から暮らしを守る。人事ではない土砂災害

近年、これまで経験したことのないほどの巨大な台風や集中豪雨による災害が増えています。すでに今年も各地で大規模な土砂災害が発生し、人や住宅に大きな被害をもたらしていますが、このようなケースは今後更に増える見通しと言われます。日本列島に住宅を構える以上、どこにでも危険があると考えるべきですが、自分の住んでいる所に限っては大丈夫と思い込んではいないでしょうか。今お住まいの地域はどのような特性があるのか、正しく知っている方は案外少ないようです。これをきっかけに、住まいの土地の安全性について確認してみましょう。

身近に潜む危険に気付いていますか

今年の8月、広島市北部で痛ましい大規模な土砂災害が発生しました。日本は地震国であると共に、梅雨や台風などに伴う集中豪雨で水害が起こりやすい国と言えます。特に豪雨や地震で発生するがけ崩れや土石流などの土砂災害はエネルギーが強大で突発的なことから、ひとたび発生してしまうと甚大な被害につながる恐れがあります。土砂災害というと山の中や河川の傍でもない限り関係ないと思うかも知れませんが、危険な場所が身近にあるのに気付いていないだけのことも多いのです。

まず、今の住まいの地域の様子を確かめてみましょう。兵庫県のホームページ内の「兵庫県CGハザードマップ(地域の風水害対策情報)」では県内の知りたい地域の自然災害危険度を確認することができます。パソコンを使わないという方はお知り合いから内容を印刷してもらうなどして、また地域の回覧板や市の広報紙の中などにも掲載している時がありますので、常に最新の情報を得るようにして下さい。

兵庫県ホームページのCGハザードマップ

※1.兵庫県ホームページにあるCGハザードマップ。 郵便番号や住所から検索 することができる。
※2.たつの市の一部の検索結果。黄色部分は土砂災害警戒区域、青線矢印は土石流が起こる危険のある場所と流れ方向を示す。この他、市町村でも詳細なハザードマップを公開しているのこともあるので、市の広報誌やホームページも一緒にダブルチェックを!

兵庫県CGハザードマップでは土砂災害の他、津波などの自然災害の危険度を地図上で色分けし、分かりやすく表示しています。例えばたつの市内を見ると市街の住宅地にも土砂災害警戒区域があることが分かります。危険度を知り、災害時に的確に行動できるように日々の対策を考えておく必要があります。

知る努力と行動する努力を持とう

ハザードマップを見て、土砂災害警戒区域に指定されていることを初めて知る方も少なくありません。いつの間に決められていたのか疑問に思う方が多いのも当然です。

なぜならハザードマップが作られ始めたのは平成13年に「土砂災害防止法」という法律が制定された後からで、当時はその法律があまり知られていなかったこともあり、警戒地域に指定するという告知があっても気付かなかったこともあるようです。土砂災害防止法は、平成11年にやはり広島県呉市で起きた大規模土石流の発生をきっかけに、二度とこのような悲惨な災害が起きることのないように定められました。

土砂災害の危険のある区域を土砂災害警戒区域(イエローゾーン)もう一段階危険度の高い土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定して、災害の危険が迫った場合に迅速に避難できるよう住民に警戒意識を高めてもらい、自治体には避難体制の整備を義務付けます。
法律の制定後、各県では県内の土砂災害の恐れがある区域の地形や地質、土地利用状況について基礎調査を行い、危険が認められた場所を「土砂災害危険箇所」として指定してきました。
ここまでは法規制は何もありませんが、「土砂災害危険箇所」からより警戒度を強める必要がある場所を、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定します。
警戒区域に指定されると、より詳細なハザードマップの策定や住民の避難訓練が必要になり、また住宅等の建築が許可制、建物の構造の規制、移転勧告など様々な法規制を受けることになります。
自治体では警戒区域の指定をする際は地域で説明会を行い、住民の合意を得ることを前提としているので、指定にはかなり時間がかかるようです。警戒区域の指定を受けると、補助金などを使って少ない負担で危険対策を取ることができますが、その反面土地や不動産としての価値が下がることや、住んでいるところが危険な場所と言われることへの抵抗感、避難訓練が面倒だという理由で指定を拒む傾向にあるようです。

今年広島で起こった土砂災害の区域は、危険箇所には指定されていたものの警戒区域に指定する作業が遅れ、災害に間に合わなかったと言われています。30年、40年と住み続け、周囲に住宅も多くあるような場所が危険なはずがないと思うかも知れませんが、自然災害は人間の時間感覚をはるかに超えたスパンで起こります。危険箇所や警戒区域の指定は、物理や科学的な調査結果に基づいていますので、指定勧告は前向きに捉えて、避難方法をご家庭で話し合うなど防災に向けた対策を始めた方がはるかに有効です。

また、最近ではこのような危険箇所に住む人に対し、不安をあおるような詐欺的商売やリフォームを行う業者が出始めていますので、自己防衛のためにも住まいの土地の安全性を正しく知り、必要な対策を考えておきましょう。

尚、気象庁から「土砂災害警戒情報」が発令されることがありますが、これは大雨洪水警報よりも格上の警報です。近くに土砂災害警戒区域がある、指定されている、または指定の話があるという場合は自治体の避難勧告を待たずに一刻も早く避難の準備を始めましょう。

土砂災害危険箇所兵庫県集計 中播磨(姫路市) 西播磨(たつの市他3市3町)
土砂災害 734 1393
危険渓流
うち警戒区域 727 1382
地滑り危険個所 2 25
うち警戒区域 0 25
急傾斜地崩壊危険 1459 2779
うち警戒区域 1362 2672
土砂災害危険箇所合 計 2195 4197
土砂災害警戒区域合 計 2089 4079

※3.H26.4.1現在 中播磨(姫路市)と西播磨(たつの市、相生市、赤穂市、宍粟市、上郡町、佐用町、太子町)内にある土砂災害危険箇所と警戒区域の数。大げさと捉えずに、身近な場所の安全性を確認しておくことは大事。尚、兵庫県内には土砂災害特別警戒区域は芦屋市に一箇所のみ。

生命と財産を守るための土地選び

高度成長期で人口が増加した際、都市郊外では活発な宅地開発が行われ、安全性が確かではない山間部でも切り開かれて多くの住宅地が出来ました。広島で起きた土砂災害の区域は扇状地と呼ばれる、山地と平地の堺に扇のように広がった場所です。扇状地は土石流が何度か繰り返されて形成されており、常に土石流の危険にさらされてはいますが、普段は水はけがよいので地盤は問題ないとして宅地に供されていたようです。そのような危険を含んだ土地が宅地として売買されること自体問題ないのかと思われるかもしれません。

しかし、今のところ法律の規制はなく、民有地の売買は自由です。土砂災害警戒区域や特別警戒区域であっても、規制はありますが建物を建てることはでき、土地取引も行われます。土砂災害防止法が制定される以前は、建築基準法や宅地造成等規制法、都市計画法などの法律で、宅地開発や住宅の建築、土地取引について一定のルールが決められてきましたが、いずれも許可制や規制であって、土地を売ってはならない、建物を建ててはいけない等の禁止事項はありません。

つまり、条件を満たしているならば、今でも希望の場所に住宅は建てられるということです。それは狭い国土のこと、危険な場所を全て禁止していたら建物に供する土地が確保できないこと、また何よりも土地所有者の財産と権利を守るという考えを優先するので、個人の自由を禁止することはできないのです。
そうなると、市場で販売されている土地や建物の購入は、自己責任が強く問われることになります。
事前によく調べて納得しておくことはもちろんですが、購入の際に必ず行われる重要事項の説明はしっかり聞きましょう。その土地が警戒区域であるか否か、他のリスクの説明もありますから、細かなところまで確認しておく必要があります。国が開発許可を出した土地だから大丈夫だろう、建築許可を出した住宅なのだから安全なはずという過信は禁物です。リスクが高い土地は格安なことが多いので、それが魅力的に見えてしまうと多少のリスクよりもメリットを優先してしまいがちになります。土地を選ぶ権利がある一方で、土地が持つリスクにもきちんと目を向けて冷静に判断する必要があります。

崖の高さの2倍または50m

~編集後記~

前回リフォームを特集したエイディーハウス通信の発行後、編集者Y宅でもガスコンロをお取替えプチリフォーム。十五年使用したガスコンロは不完全燃焼を示す赤い炎が出始め、どの鍋底も見事に真っ黒コゲにしてくれました。えーと、コンロの掃除不足のせいではありません、経年劣化です(言い訳)
で、その最新ガスコンロ君が実に賢い。焼き加減も温度管理も完璧にしてくれる上にフラット調理面なのでお掃除もラクラク。既にIHを取り入れているご家庭には何を今更と思われるようなことかもしれませんが、あまりの便利さに嬉しくて笑いが止まりません(?)魚はひっくり返さなくても上手に焼いてくれるし、揚げ物もいちいち油の温度を気にしなくても一定に保ってくれるから本当に楽♪我が家の揚げ物は劇的に変わりました。子供たちにも「なんか、から揚げおいしくなったよね!」と言われる始末、今までマズかったのか(汗)

実は編集者、なぜか今まであまり自動調理や温度センサーなるものを信用していなかったんです。火加減くらい自分で調節しようよ!それ位できなくてどうする?とか、そんなものに頼って料理していたら人間の持つ感覚や本能のようなものがダメになりそう等々、変な意地があったのですが、あっさりと考えを改めました。便利なモノは、やっぱりいい。生活する以上家事は必須。毎日続くものだから、楽しくなるに越したことはないんです。ああ、アレをしなくては・・・という精神的な負担がないほうが幸せに決まってる(笑)現代に生まれたことは幸運であったとしみじみ思います。今はお掃除ロボットも大人気でそのうち当たり前になりそうだし、洗濯機もまだ進化の余地がありそうで期待してしまう!えーと、単にラクしたいとか、手抜きだけを考えてる訳じゃありません。家事の効率が上がれば、質の高い充実した生活が送れるってことよ!いいでしょ?

AD HOUSEが叶える
“理想の暮らし”

MORE