
コラム
2024.10.01更新
『「新しい防災」で、災害に強い住まいをつくる』エーディーハウス通信2024年秋号
台風や地震など、常に自然災害にさらされている日本。特に今年の夏は酷暑の中南海トラフ臨時情報が出されたり、迷走する台風の影響に今までにない不安を覚えた方も多かったと思います。我が家の防災はこれで十分なのかも気になりますね。今回はこれからの日本の住まいに必要な備えについてお伝えします。
目次
「いつも」にも「もしも」の時も快適で安全な家にしよう
頻発する大地震や巨大化する台風の襲来に、家は地震に対して更に強くするべきか、それとも風水害に重点を置いた方がいいのか悩むという声をお聞きしました。答えは「全ての災害に対応できる家」どんな災害にも強いことが必要で、どちらかに特化するということではありません。そう聞くとどれほど重装備になるのか心配かもしれませんが、非常時にも対応した家とは日常の生活も安全で、快適な暮らしが自然に叶えられています。これから新築や改築を考えている方は、災害から家族を守る家づくりと暮らし方について学んでおきましょう。
家の始まりは地盤を知ることから ハザードマップは最新をチェック
まず一番に重要になるのが、家の支えとなる土地の地盤の強さです。2000年の建築基準法の改正により住宅は地盤調査に基づいた設計をしなければならず、土地を購入して家を建てる場合は基本的に地盤調査が必要です。弱ければ地盤の補強や改良をしなければいけないので、建てる場所の周辺の土地や地盤の情報を収集しておくことが大切です。
そこで必ず確認したいのがハザードマップです。ハザードマップはその地域に洪水や土砂災害、地震などが起こった場合どのような被害が想定されるのか、色分けで表示された地図のことで、既にご存じの方も多いと思います。自治体から配られたマップ等で自宅周辺の状況は把握済みという方も、最新の情報の確認をお願いします。地震や洪水で土砂災害が起こる危険がある地域については、土砂災害警戒区域(イエロー)と土砂災害特別警戒区域(レッド)が指定されますが、指定場所は年々増加しており、姫路市、たつの市周辺では10年前と比べて特に土砂災害特別警戒区域が4千件以上増えています。
ある日突然指定されてしまうことはありませんが、周辺の土地の形状が変わった場合などに調査が入り、後に指定される可能性はあります。なお、土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域に指定された土地でも売買に制約はなく、建物も制限付きながら建てることが可能です。つまり、災害のリスクがあると知った上で自己責任で家を建てて住んで下さい、ということになります。
自宅の災害リスクが分かったら今すぐ防災対策を始めよう
これから土地や住まいを購入する場合は事前に調べることができますが、既に住んでいる自宅の周辺を調べてみたら土砂災害の危険区域内に指定されていた、また古い住宅なので耐震性が心配だというのはよくある話です。だからと言って転居も簡単ではないので、まずは今の住まいでできる防災対策から始めましょう。特に幼児や高齢者、ペットなどがいる場合は指定避難場所への移動が難しくなるので、自宅で身の安全を守りながら避難することを想定しておきましょう。住まいを防災強化するポイントはいくつかありますので、新築・改修時の参考にして下さい。
まずは耐震補強からスタート 次に室内の防災対策を見直して
大地震がいつ起こるか分からない中、揺れに強い住まいにしておけばいつも安心です。強風だけで建物が壊れてしまうことはほとんどありませんが、耐震性の高い頑丈なつくりであればもちろん風に対しても強いということ。耐震性能はやはり最高等級の3が望ましいでしょう。今のお住まいにすぐの耐震強化は難しいという場合は、とりあえず寝室の一室だけでもよいので、シェルターとなる頑丈な部屋をつくることをお勧めします。一室だけならば大がかりな工事が不要で費用も抑えられ、また家全体の補強にも繋がります。古い木造家屋への施工も可能なので、リフォーム気分で耐震改修を考えてみてはいかがでしょうか。
次に室内の防災対策を見直してみましょう。地震の時、負傷者の約半数が家具類の落下や転倒が原因で負傷しています。枕元に倒れたり落ちるものを置かないなどの対策を取られている方は多いと思いますが、家具は必ず倒れるものと考えて固定すること、最善の方法としては家具を造り付けにしてしまい、タンス等は一切置かないことをお勧めします。室内の雰囲気に合わせて最初から収納場所をつくってしまえば見た目も美しく、空間を無駄なく使えます。
大容量のパントリー兼備蓄庫で毎日の暮らしもより便利にすっきり収納
常食や防災用品の置き場所も重要です。飲料水の備蓄は一人一日3リットルが目安で、4人家族の場合3日分備えようとすると最低36リットルが必要です。現在では一週間分が推奨されており、食料と合わせると相当な量を保管しなければなりません。備蓄場所は日常生活に近く、取り出しやすい所に確保しましょう。一番効率が良い場所は玄関とキッチンの間です。買ってきたものをすぐに収納でき、全体の量や過不足を把握しやすくなります。また備蓄庫はキッチンに併設してパントリーと兼用にすると普段も使いやすく、食品を消費しながら補充するローリングストックも簡単に行えます。水害の心配がある地域の場合は、2階にも少し置けるスペースを設けましょう
また飲料水の他に、物を洗ったりトイレを流す水も必要です。地震発生の危険が高まっている時はお風呂に水を常にはっておく、水を入れたポリタンクを用意するなどもしておきましょう。
家の中の行き止まりをなくして避難時も毎日の家事もスムーズに
急な避難が迫った時、どの部屋からも安全な場所へ素早く移動できるようにしておくことも大切です。避難経路は最短にして、途中でモノが散乱して逃げ道を塞ぐことがないよう注意しましょう。そのためには極力廊下をなくし、開放的な間取りにしておくことをお勧めします。空間をゆるやかに仕切って回遊性をもたせておくと各部屋間の行き来が自由にできて避難がしやすくなるほか、家事動線も短縮されて毎日の家事を軽減することができます。繋がりのある空間には常に家族の気配を感じられ、安心感が得られるという利点もあります。
高気密・高断熱はいつでも命と健康の力強いお守りになる
幸いにも自宅が無事で自宅避難ができる場合でも、電気やガスが使えない可能性があります。冷暖房が止まると一番心配になるのは健康への被害です。過去に日本で起こった大地震は冬に集中しており、避難場所では低体温症にかかったり、感染症の集団感染などで命を落とした方が多くいらっしゃいました。例え電気やガスが止まり空調機器が使えなくても、生活に影響がない室温を自然に保つことができれば、安心して過ごすことができますね。住まいの高気密化・高断熱化はここでも重要な役割を果たします。気候の影響を受けず、いつも家の中が一定の温度であれば、普段の暮らしも快適で省エネも実現します。また、回遊性があって開放的な間取りを叶えられるのも高気密・高断熱があってこそ。室内全体の温度にムラがなく均一のため、ヒートショック対策にも大きく役立ちます。これからの住まいは、防災に特化しながら普段の暮らしも快適な家。要点をしっかり押さえれば、自宅が最も安全な避難場所にすることができます。この他にもご心配やご要望にお応えできるような多彩な防災アイデアをご提案させて頂きますので、地元に詳しい私たちに是非ご相談ください。