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2011.10.01更新

ADハウス通信 2011年8月・9月号「エアコンの連続運転は本当に節電なの?」

いつもより早い梅雨明けで、もう夏も真っ盛り。
強さを増す太陽に負けないように体力作りをして元気に乗り切りましょう。

エアコンの連続運転は本当に節電なの?

震災以降、節電という言葉を聞かない日はない毎日ですが、
夏に向けて節電の呼びかけがまた一段と強くなってきました。
社会全体が懸命に節電に取り組んでいるようですが、皆様のご家庭ではいかがでしょうか。

節電の矛先は特にエアコンに向けられていますが、本格的な暑さを迎えた中、
冷房を使わずに頑張るというにも限界があります。

熱中症の9割が自宅で発生していることから、冷房は決して無駄な電気とは言えず、むやみに節電の対象にしていいものではありません。

エアコン連続運転は性能を知って正しく使えば十分な節電になり、
健全な生活を無理なく送れるはずです。
そもそも今年目標に掲げている「節電」とは誰の、何のために行うのでしょうか。
本当の節電についても考えてみたいと思います。

温度よりも湿度に注意

夏の電力不足対策として、エアコンの使用を「無理のない範囲で控える」か、
つけるなら設定温度は28℃と推奨されていますが、これでは説明不足です。
28℃とは熱中症を引き起こさないギリギリの室温であることや、
また温度以上に注意しなければいけない湿度について全く触れていません。

熱中症には湿度が大きく関係していて、室温が28℃でも湿度が80%を超えると汗が蒸発しにくくなり、
体温が下がらなくなる熱中症警戒域に入ります。
このような限界近い温湿度を目標にするのは危険ですから、
室温は28℃でも湿度は70%以下にすることが「無理のない範囲」であると言えます。
室内には温湿度計が備えられているでしょうか。
エアコンの設定温度に頼るのではなく、実際の室内の温湿度を確認できるようにして下さい。

湿度が高くなければ扇風機でも十分ですが、
高い時はエアコンでの除湿が必要です。

入浴や炊事などで水蒸気が多量に発生した場合、わずかな時間でも室内の湿度は相当上がっています。
入浴や炊事の時は必ず換気扇を使って外に水蒸気を排出させましょう。これらの水蒸気をエアコンだけで取り除くには時間がかかりすぎ、多くの電気を消費してしまいします。

冷房の上手なコントロール法

ほとんどのエアコンには冷房と除湿の機能がついていますが、この違いや特徴を理解しておくと、状況による上手な使い分けに役立ちます。冷房運転は除湿も同時に行うので、これが一番効果的に温度と湿度を低くすることができます。しかし節電に心掛けたつもりで、外気温とあまり変わらないような高めの設定温度で冷房を始めてしまうと、(外気温よりもマイナス5℃以内の設定温度)あまり効果が得られないという現象が起きやすくなります。

<冷房と除湿の仕組み>

冷房と除湿の仕組み

それはエアコンが少ない能力で済まそうとするため、熱交換器の働きを弱くしてしまい、冷房や除湿に対する能力を最初から落とした運転になるからです。

特に除湿は、熱交換器で空気をできるだけ冷やし、結露を多く発生させて取り除くという仕組みで行われていますから、熱交換器の働きが弱いと除湿量はとても少なくなります。
暑い部屋を冷ます場合はまず窓を開けて溜まった熱気を外に出し、つけ始めのエアコン設定温度を低くして冷房します。室温が下がり、危険な湿度を脱したのを確認してからエアコンを切らずに設定温度を上げたり、除湿運転などの軽い冷房に切り替えるとよいでしょう。実はエアコンの除湿とは冷房運転を少し弱めているだけなので、弱冷房と一緒であるものがほとんどです。風量や風向きは自動に任せた方がうまくいきます。

エアコンは連続運転で

いずれにしても、暑くなったから冷房をつけ、冷えたら切る、という頻繁な入り切りは、初期運転に多くの電力を消費するエアコンにとっては非常に効率が悪いものです。

ある8畳用エアコンのカタログ記載例

ある8畳用エアコンのカタログ記載例。冷房の消費電力をよく見ると480の数字の下に(90~970)との記載があり、運転状況によってはこんなに差がでるということを表している。
このエアコンの場合は480Wは安定継続運転中の平均値。95Wは送風のみ、970Wは初期運転の時の最大値。

熱を持った壁や天井を冷ますには大量の冷たい空気が必要で、エアコンの能力を最大限に使っては切るという繰り返しになり、結局消費電力を増やしてしまいます。手間が無駄になるばかりか、室内の温度が安定しないので不快を感じ、心身にもよくありません。特にマンションのようなコンクリート造の住宅では、昼間コンクリートに蓄積された熱が夜にかけて放出されるので、夜間でもその輻射熱で室内が相当な暑さになっていることがあります。夜だからとエアコンを止めてしまうと、就寝中の気付かぬうちに室内が高温多湿に達している場合があるので注意が必要です。
このような事態を避けるには、やはりエアコンは軽くても連続運転させておくことが望ましいと言えます。
連続運転による消費電力を効果的に抑えるためには、今使っているエアコンの性能を把握しておくことが大切です。エアコンには冷房や除湿など様々な運転モードが搭載されていると思いますが、取扱説明書に記載されている定格消費電力などを見比べて、消費電力が多い運転モードの順番を確かめてみましょう。

連続運転による消費電力を効果的に抑えるためには、今使っているエアコンの性能を把握しておくことが大切

温度と湿度を大きく下げる場合は「冷房」、軽く冷房したいときや省エネルギーで長時間運転するときは「弱冷房除湿」、就寝時や就寝前は「再熱除湿」などをうまく使い分けましょう。

必ずできる、節電運転

ほとんどの除湿は弱冷房と同じなので、冷房より消費電力が少なく済む場合が多いのですが、最近の上位機種では温度を下げずに湿度を下げる「再熱除湿方式」の除湿を行うものがあります。再熱除湿は、除湿されて冷えた空気を再び暖め直して室内に戻しているので、冷房と比べて約20%多い電気を消費しています。お使いのエアコンの除湿はどのような運転方法なのか確かめ、最適な使い方を見つけることが消費電力削減になります。
また古いエアコンであるならば買い換えるだけで節電目標を達成します。2004年度製はエアコン革命と言われ、この年を境にエアコンの消費電力は格段に少なくなっており、現在の最上位モデルと2003年以前のエアコンを比較すると、消費電力は約4割減となっています。その他フィルターのこまめな掃除(目安として2週間に一度で10%の節電)室外機に日除けをし、吹き出し口付近を塞がないように工夫する(約10%の節電)だけでも十分な節電効果があります。エアコンを使わないで我慢する節電よりも、上手な使いこなしによる節電を目指しましょう。

勘違い節電にしないために

大事なことは消費電力の総量を減らすことですが、この夏電力会社から要請されている「節電」は、それとは随分質が異なる内容になっています。午後の暑い盛りの時間帯に電力使用が集中しないように、ずらして使えるものはできるだけ他の時間帯で使うように求めているだけで、これでは単なるピークシフトに過ぎず、全体の電力消費量を減らそうとしているものではありません。電力会社も商売ですから、作った電気は買ってもらわないと利益が得られません。電気消費のピークに合わせて発電した電気を、ピーク以外の時間帯に余らしてしまうよりも、平均的にまんべんなく電気が使われたら、電力会社としては効率の良い商売となります。
消費者が本気で全てを節電してしまったら経営上困りますし、オール電化住宅を推進してきた手前もあり、電気を使わないで欲しいとは言えず、ピーク時の重点的な「節電」を依頼している訳です。
この「節電」のやり方も原発停止の影響を少なくできる方法の一つといえば聞こえがいいですが、社会全体で使う電気の量を減らさない限り、原発依存は続いてしまいます。電力会社の都合に合わせた電気の使い方に協力するよりも、今の生活から電気量を減らす方法を考えて行動する消費者になりたいものです。

省エネ住宅で社会貢献

昨年のエイディーハウス通信でもお伝えしましたが、暖房や給湯は冷房よりもはるかに大量のエネルギーが必要です。暖房や給湯にも電気を使用するとしたら、冬は今よりももっと深刻な電力不足が起きるはずです。今、冷房にこだわっている場合ではなく、これから永遠に続く電力不足に対して待ったなしの対策を取らなくてはなりません。
まずは家庭で消費するエネルギーを分散化し、有効活用することです。

暖房や給湯など、電気でなくてもまかなえるものは太陽熱などの自然エネルギーを活用して、電力使用量を減らしましょう。そしてエネルギーを無駄使いしない断熱性能のよい住宅をつくることが大切です。
断熱性能が高い住宅では、冬は控えめな暖房でもあたたかく、夏は小型エアコンの軽い冷房で一日中快適に過ごすことができます。具体的には次世代省エネ基準断熱Ⅳ地区、または住宅性能表示温熱環境等級4、もしくは長期優良住宅認定基準の2倍程度の性能があれば、生活の質を犠牲にすることのない省エネルギー生活を送れるはずなので、国の方でもこのような家づくりの指針を出すべきだと言えます。
一時の節電では社会は持続できません。エネルギーを正しく使える住まいと暮らしが、未来を支える力になります。

編集後記

普段は滅多に電車には乗りませんが、先日久しぶりに電車で大阪へ。車内、暑い・・・地下街、暑い・・・ビル内、暑いっ!女性なら分かると思いますが、女の人ってだいたい冷房に弱くて、ちょっとでもエアコンが効いているとすぐに体が冷えてしまいますよね。そんな冷え症の編集者でさえ非常に暑いと感じたということは、各機関が余程冷房を控えているんだなと感じました。毎日通勤の方々はさぞお辛いことでしょう、JRの中でも扇子やうちわがあちこちでヒラヒラ舞っておりました。そして至る所で「節電へのご理解を」の呼びかけ、あるデパート入口には「東日本大震災の影響により節電している」という張り紙がしてありましたが、え?東日本大震災の影響で、節電してるんですか?大阪で?まあ、今年の節電騒ぎのもとをずーっと辿っていくと、最終的には大震災になるんでしょうけど、飛躍してませんかねぇコレ・・・
だいたい、節電と言われたら何でも納得しなきゃいけない雰囲気、異様だと思いません?東北の人たちのために節電に協力すべき!とか、計画停電は困るからとにかく節電だ!とか、原発動かせないから節電するしかないだろう?とか、オドシ的な節電神話ばかりで、いつの間にか何でも我慢大会みたいになって、何かオカシイ。あの3月11日から、何か世界が歪んでしまったように感じるのは編集者だけでしょうか。

もし、原発事故が起きていなかったなら。今よりはもっと平和な毎日だったに違いないのにとつい妄想モード(笑)でもそうであったとしても、いつかは起こるべきだった事態に、フタをしていただけの危うい平和がまだ続いていたってことですよね。震災の前は、今より更に14基も原発を増やす予定だったんですから!今の厳しい現実から目をそらさずに、正しい情報を得る力をつけて行動したいものです。情報開示よろしくお願いしますね、政府の皆さん、○電さん。

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