2021.04.08更新
段差の巧みな設計を解説します。
この写真は、もう10年前のものですが、北面以外、周囲の建物に迫られている姫路の物件です。
写真中央のナラの床部分が通常の1階レベルになります。30センチあがってダイニングとキッチン、水回りスペースがあって
写真左は、1床から60センチさがった半地下のしっくい和室、その上には1床から140センチあがった中二階の書斎
写真中央上は、通常の2階となっております。
写真には現れていない2階から30センチあがりの寝室等もあり
玄関土間を除いても、2階建てでありながら6層にもなる、かなり複雑な縦断面を持つ住宅であります。
突き詰められた段差の設計として、
視覚的な段差、光の通路としての段差、温熱効果の段差と3つの視点から考えられております。
段差はいいか悪いかを考えると、バリアフリーの観点や、移動など考え始めると、迷宮入りしてしまいます。
段差は、適度にあると、空間が多様になり、居場所パーソナルな場所ができ、面白いものになります。この写真だけでも5箇所の居場所ができています。家族人数以上ですね。
段差を利用した収納も容易にできます。
例えばキッチンの正面の壁などは、通常のリビング床からは140センチにもなるので、ここからは完全にキッチンが見えないのでよいです。キッチンに思わないかもしれません。
床下収納は1fで高さ70センチ近くとれますので、いくらでも入ります。
この写真では縦断面の空気の流れも説明できます。
空気は通常あったまると上に向かいます。ですので、1Fでエアコンをかけると2Fは簡単にあったまります。ここでは、写真上の2Fクロゼットへ斜め天井へそって空気が流れます。
上記の開口の下側にはガラスがはめ込んであり、上は抜けております。
また、夏場のエアコンは2fホールにあり、階段とこのクロゼットの開口の上部から冷気がおちます。それとこの下廊下の中央に凹みがありますが、実はスノコ上の床になっており2F共用部との空気の入れ替えが可能になっております。
写真の上部の2Fクロゼットの戸が明るくなっているのがわかりますでしょうか。2Fの南側のマドからの光です。建物の真ん中でも同じ空間で明かりが確保できるのです。
写真左下には地窓からの明かりが感じられます。
その他この写真から解説すると
照明は目線の高さを意識し低めの明かりをいくつか配置しています。そのため落ち着きがでます。
床面積は小さいですが、対角を意識し長い視線に、見えかくれを作りより長く感じるように考えております。ですので同じ床面積でも見た目は全然大きな家に感じます。
右側の格子は、耐力壁の役目ですが、抜けがあり閉塞感がありません。
右側の格子の左端には、見えますか8角形の柱です。中央の柱も8角形。8角は便利かっこよくもあり和洋に使えます。
こまかな壁のRなどもおわかりでしょうか。左下とその上の横長室内窓、中央奥の天井は大きなRがとってあります。
光と風と温熱と見た目の段差いかがでしょうか。小さな敷地でこのような遊びも可能です。