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一級建築士 匠の視点 ブログ

2024.05.07更新

木造でコストをかけずに大空間構造を考える。4.合成梁と方杖。

合成梁と方杖:瓦屋根と積雪、断熱材の重量に対応する構造

積雪と断熱材による負荷

日本の厳しい冬季における積雪や、断熱性を高めるための分厚いセルロースファイバーは、想像以上に建築物に重い負荷をかけます。特に、伝統的な瓦屋根や土壁を備えた建物ですので、その重さを支えるために特別な構造的配慮が必要です。本プロジェクトでは、密度の高い40cmのセルロースファイバーを用いた屋根断熱と外壁に付加断熱を施しています。このような性能を確保のための重量増加により、構造体への負荷が通常の物件よりも大幅に増加しています。

1F和室の構造的工夫

1階の和室は、千本格子の欄間と薄めの長押デザインが特徴です。これらの繊細な構造部分が時間とともに変形しないように、上部からの総合荷重が2階の床梁に直接かからないよう工夫が施されています。具体的には、2階の床梁は床荷重と内部壁の一部のみを支えるようにだけ設計されており、それ以外の大屋根、下屋や外壁土壁の重さは建物の柱に逃がすように工夫しています。

合成梁と方杖の役割

最も注目すべきは、合成梁と方杖の使い方です。これらは計算上では必ずしも必要ではないものの、実際の使用状況を考えると、スパンの1/600で許容される6ミリの撓みが許されても、見た目の美しさを損ねる可能性があるため、慎重に配慮しました。実際は横材だけでも十分だが、両面に構造用合板を張って背の高い一体の合成梁とすることによって強固な梁にしたてている。特に、方杖は下階に少しでもランマ建具の見え方に影響が出ないように、徹底的に撓みを防ぐために追加されています。

完成した和空間

これらの工夫により、和室空間は見た目が繊細でありながらも、構造的にも非常に強固です。合成梁や方杖は、計算上の耐力壁ではありませんが、実際は補助的な耐力壁としての機能も十分果たしており、長期にわたる安定性と美観を保持しています。

 

この写真では、方杖が見えており、その上の合成梁は下屋のタルキによって見えていません。

 

 

 

仕上がるとこのような繊細な空間、それだけに、経年で撓みによる平行垂直の狂いは許されない。人間の目は精度がよくて、数ミリ違えば違和感を感じる人も多い。

 

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