
2025.06.18更新
私が、大阪万博を「CLT木造博覧会」と呼びたくなる理由
私が、大阪万博を「木造(CLT)博覧会」と呼びたくなる理由
- 階段状のスペイン館、裏側に現れるCLTの構造美
スペイン館は、外から見ると圧倒的な大階段がとても印象的です。
実はあまり見ないでしょうが、その裏側にこそ建築好きにはたまらない構造美があります。
階段状スロープの床には、コンクリートや鉄ではなく、CLT(直交集成板)が使われ、これを木の柱や壁がしっかりと支えています。
この構成は、まさにコンクリートスラブの発想を木造で実現したもの。構造体の力強さと温かみが空間全体に現れています。
木造でここまでダイナミックな階段を実現しているのは、やはり新鮮な驚きがあります。
- 大屋根リング、斜面の屋上緑化もCLTで
大屋根リングの斜面部分。デッキ周囲には土壌が敷かれ、草花が植えられています。
この土壌を支えるスラブもCLT。斜めの床をCLTで作るという発想は斬新で、
コンクリートスラブでは難しい施工も、CLTなら合理的に実現できそうな感じがします。
木製の素材のCLTが目線の高さに現れることで、木と緑が一体となった、とても優しい感じの新しい都市景観が生まれています。
コンクリートでは出せない感覚が素晴らしい。
- 住宅スケールでのCLTはどうか
正直なところ、住宅レベルでCLTを使う場合、その質感はADHOUSEが普段選んでいる繊細な無垢材や突板、左官仕上げなどと比べると、
かなり“チープ”に感じてしまうことがあります。
CLTはあくまで「構造パネル」。木目や積層の表情は素朴で力強いものの、住宅のインテリアとして求められる繊細さや上質感とは少し違います。
住宅では、仕上げ材としての木の選定やディテールへのこだわりが空間の質を左右するため、CLTのラフな印象が気になるケースもあるでしょう。
- オフィスやクリニックでのCLTの可能性
一方で、CLTのダイナミックな一枚壁やスラブは、オフィスやクリニックなどの大空間でこそ本領を発揮します。
大空間では「見ようとしないでも目に映る面がぼんやり木であるというだけで十分」という感覚になると思う。
企業イメージやリラックス効果、短工期・コスト効率など多くのメリットがあります。
構造体そのものをデザインとして見せる発想や、木のスケール感を活かした空間づくりは、住宅よりもむしろオフィスや公共空間でこそ映えると実感しています。
- 今後のADHOUSEでの展開
実は2019年からCLTを将来視野に入れていましたが、コロナ禍で一時中断していました。
とある企業様からの依頼でCLTでの建築提案を行いました。
その後に万博へいって、さらにCLTの可能性について学びました。恒久的にCLTを使うにはどうするかを考えていく。
今回の万博現場での実体験を経て、今後はADHOUSEでも、一般建築でのCLTを活かした建築の提案を積極的に行っていきたいと考えています。
クリニックやオフィスの設計において、CLTの構造美・合理性・サステナビリティを最大限に活かし、木造建築の新しい可能性を追求していきたいと思います。
余談ですが、おみやげ館などは、外側もCLT壁剥き出しという斬新な建築で、使い方に感動しました。構造と意匠が一発で成立、ログハウスよりも都会的でいいのでは。
ぜひ、期間中そのような目線でご覧になっていただければ、違う目線で楽しめるかもしれません。